スマイル 〜約束した君へ〜
「…腎臓、腎臓…って、お前らだって持ってんだろっ!!分かって言ってんのか!!」


キレたように声を荒げて、騒いでた子達を睨む。
睨まれた子達は顔を見合わせて、お互い知らん顔をした。


「腎臓がなきゃ、人はすぐに死ぬんだよ!!そんな事も知らねーのか!!」



逆上してる。

その姿に、緒方先生が初めて口を開いた。


「ソウヤの言う通りだぞ。腎臓が体の中の不要なモノをきれいにしてくれるから、人間は元気でいられるんだ」


詳しいことは保健の先生にでも聞けと言って逃げる。
それを鼻でせせら笑って、河口君は自分の机を持ち上げた。


「…そんなにイヤならオレが代わってやっから、お前あっち行けよ!!」



有無も言わさず机を避ける。
ポカン…としてる私のことは全くムシ。

でも、もしかして、庇ってくれた……?



「…ソウヤ、…カッケー!!」



ダイゴ君が囃し立てる。
それに反応も示さず、彼は私の隣に座った。


怒ってるような横顔。
その顔を見てたら、涙がこぼれそうになった。


(この人は…やっぱりそうちゃんの弟だ…。不器用だけど……どっか優しい……)



あの日直の時と同じだと思った。
紙が破れてビクつく私を怒りもせず、すぐに新しいのを取りに行くと言って立ち上がった。



(……ありがとう…)


声に出せないけど、心の中でお礼を言った。
そうちゃんの代わりにあの場所へ来た理由も、いつか聞いてみたいと思った。
< 112 / 168 >

この作品をシェア

pagetop