スマイル 〜約束した君へ〜
あのビンタ以来、10日ぶりくらいのまともな会話。
これまでと全く変わらない態度で、彼は私に答えた。
「オレはいーよ!隣のヤツに見せてもらえっから!」
見せろよな…と、隣の男子を脅してる。
戸惑う私の視線を受けて、ダイゴ君が親指を立てた。
「あ…ありがとう…」
やっと、小さな声でお礼が言えた。
10年前のあの日、私の所へ駆けて来た「そうちゃん」
身代わりだったけど、それがどんな出会いよりも嬉しかった。
「…ねぇ、ちょっとソウヤ!」
まりんちゃんが怒ったような顔をして、近づいて来た。
「…この間から何なの⁉︎ なんでこの子にそんな優しくすんの⁉︎ あれだけ面倒見るのヤダって言ってたのに…もしかして、好きなの⁉︎ …ハルナのこと!!」
「まりんちゃん…!」
そんなコトある訳ないでしょ…と言うつもりで名前を呼んだけど、ちっとも相手にされなかった。
まりんちゃんは尖った眼差しのまま、河口君のことだけを見てたから。
「…オレはコイツのこと、なんとも思ってねぇよ!けど、つまんねぇイジメばっかする今のまりんは好きじゃねぇ!…お前がそんなコトするヤツなら、別れよーぜ!オレ達!」
「えっ…!」
まりんちゃんは小さく叫んだ。
まん丸な目になって、河口君がウソだと言うのを待ってる。
でも、彼は、何も撤回してこなかった。