スマイル 〜約束した君へ〜
……思わず握った小さな手は、あの日と同じ感触がした。

高校生とは思えないくらい、小さくて子供のような手。
それをどうして握ってしまったのか、オレ自身もよく分からない。


「…放してよ!」


振り解こうとするヤツが暴れる。その手を、更に力強く握った。


「…まりんちゃんを傷つけないでって、あれ程言ったじゃない!」


振り回しながら怒鳴ってる。


「うるせぇ!どっちにしても傷つくんだから、いつフったって一緒だろ!」


同じボリュームで言い返す。


「だからって、今じゃなくてもいいじゃない!それに、あんな言い方しなくても!!」


売り言葉に買い言葉で返す。
解けない手を振り回すのを止めて、ヤツは静かに呟いた。



「……もういい…放して…」


落ち込んだような顔してる。
放しながらオレは、ヤツに一言付け加えた。


「…ほっとけ。まりんはそんなやわなオンナじゃねぇ」


何でも思い込んだら一筋の奴。
それが良いように発揮される時はいいけど、今回みたいな場合はサイアク。

オレが今までまりんをそんな好きじゃなかったのは、同じような現場を、これまで何度も目にしてきたからだ。


「…あいつには、仲間が何人もいる。だから心配なんかいらねぇ」


ムカついた表情でオレを見た。

「きのした はるな」の顔を見てると、必要以上に神経質になってた兄貴のことを思い出したーーーーー


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