スマイル 〜約束した君へ〜
『…お願い!この通りだから!』

10年前、兄貴はそう言ってオレに手を合わせた。


『ヤダよー…』


ジゴクに落ちたくない…と、オレはお願いを断った。
ウソつくとジゴクに落ちる…と、カヨコがいつも言ってたからだ。


『このウソはついてもいいウソなんだ!つくことで誰かの為になる!そういう優しいウソなら、ついても地獄に落ちたりしない!』


信じて!と言う兄貴の顔を、マジマジと見た。
「きのした はるな」と会う約束をしてたのに、昨日から兄貴は熱が続いてて、極端にオシッコが出なくなってた。


『ホントはボクが行けたら一番だけど、足も遅いし、間に合わないかもしれない。だからソウヤ頼む!!ニィちゃんの代わりに、はるなちゃんを見送って…元気でって伝えて!!』


兄貴は、自分が行くのがイヤだったんだ。
オシッコが出ない時の顔はむくんで、パンパンに腫れてたから。


『でも…ボク、その子の顔、知らないよ…』


渋るオレに、兄貴は目印を教えてくれた。


『はるなちゃんは、首に3つのホクロが並んでる。『三つ星』なんだって、自分で言ってたからスグに分かるよ!』


『早く早く!』と着替えさせられた。
入院着は、大キライなクスリのニオイがした。


『待ち合わせ場所は中庭!頼んだよ!』


……ベッドの中から手を振った。

バレたくないオレは自分の帽子を引っ被って、「きのした はるな」に会いに行ったーーーーー


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