スマイル 〜約束した君へ〜
怒った顔したヤツは、椅子に座り直した。

オレがコイツに優しいなんて、まりんの勘違い。
この間、怒ったのだって、ホントは兄貴の病気が関係してたからだ。



……兄貴は、生まれた時から腎臓が一つしかなかった。
その一つもまともに働かなくて、いつも大変な思いをしてた。
オシッコが出にくくなると、スグに高い熱が出る。
風邪なんか引こうものなら、あっという間に脱水になっちまう。
だから、ホントは、あんなふうに病院内をウロついたりしちゃいけなかったんだ。


兄貴は「きのした はるな」に特別優しかった。
「初恋の相手」だからってだけじゃない。
コイツが自分と同じように、腎臓が悪いと聞かされてたからだ。

『…はるなちゃん、お父さんもお母さんも滅多にお見舞いに来なくて、いつも一人なんだよ。だから、ボクが遊びに行って、心を明るくしてやるんだ!笑ってた方が病気も早く治る…って、看護師さん達も言ってたから!』



「きのした はるな」の親が、どうして見舞いに来なかったのかは知らねぇ。
ただ兄貴は、そんなヤツに同情する意味で、病室に通い始めた。


…仲良くなって、いろんな話をしてると聞かされた。
アイツの話をしてる時の兄貴の顔色はとびきり良くて、元気で明るくて…

そんな兄貴の顔を見るたびにオレは、「きのした はるな」という女の子がどんな子なのか、スゴく気になった。

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