スマイル 〜約束した君へ〜
『腎臓ちゃん』と呼ばれてるヤツを、見るに見かねたーーー


……ここに兄貴がいたら、ゼッタイ助けるだろうと思った。
コイツは兄貴の大切な「初恋の相手」
兄貴のことを『今でも大切な人』だと言った……




『うるせぇ!黙れ!』


半分は自分に対して出た言葉だった。
腎臓をバカにする奴らに対しても、言った言葉だったけど…。


騒つく心を静めるように机を持ち上げた。
兄貴がオレに乗り移って、ヤツの隣に行かせたような気もする。

驚いたような目をしてるヤツは泣きそうな顔をして、でも、泣かずにオレを見てた。


(……ありがとう…)


そんな言葉が届いた気がしたのは、何かの間違いだと思う。
でも、それからもずっとイジメに耐え続けてるヤツを見て、何故なんだろうと思い続けたーーーーー


ーーーーーーーーーー


「お前……なんでホントのこと喋んねーんだよ」


とうとうオレから切り出した。
聞かれたヤツはビックリしたような顔で、こっちを向き直った。


「…だって、そうちゃんは河口君のお兄ちゃんでしょ。私の口からは、軽々しく話せないよ…」


死んでるって事実をずっと隠し続けてた。
ダイゴにすら、ハッキリと伝えたこともない。
そんなことを見透かしたような目で、ヤツはこっちを見た。


「…バカじゃねぇのか。お前…」


有難いようなどうしようもないような気がしてそう言った。
目の前のオンナはムッとして、それでもこう言い返してきた。
< 121 / 168 >

この作品をシェア

pagetop