スマイル 〜約束した君へ〜
「バカじゃないもん!」


可愛い顔がふくれっ面になる。

オレはその顔を見て、なんだかスゴく…気がラクになった。


「プッ…!」


可笑しくなって笑いだした。
笑ってるオレを、クラスの奴らも隣のオンナも呆れるように見てる。
その視線を受けながら、オレはマジに礼を言った。


「ありがとな……兄貴に笑顔をくれて……」




…コイツと出会う前、兄貴はどっちかつーと泣き言ばかりを先に言ってた。

思うようにオシッコが出ない日は、特にイラついて、泣いて、暴れて…大変だった。
…でも、「きのした はるな」に出会って、兄貴は変わった。


『あの子の心を明るくしてやるんだ!』


使命みたいな気持ちで意気揚々と出かけては、全く相手もされずに帰ってくる。
ニコリともしない「きのした はるな」に笑顔を届ける任務は、逆に兄貴を元気にしてくれた。



『優しい子だった!思った通り、可愛い子だった!』


見た事もない清々しい顔で笑った。
後にも先にも、兄貴のあんな嬉しそうな顔を見たことはない。


(ニィちゃん…アイツと同じ学校に通いたかったろうな…)


イタズラか縁か、皮肉にも同じクラスになってそう思った。
アイツに兄貴と勘違いされてイヤな気もしたけど、大切な人として記憶に残してくれてることを、少しは感謝してた。
…一緒になって、兄貴のことを語りたいような気がしてちょっと焦った。
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