スマイル 〜約束した君へ〜
頭を抱いてた腕を離して、地面の小石を掴んだ。


「…幾ら兄貴に頼まれたからって…やっぱ行くべきじゃなかった…。そのせいで兄貴は、しなくてもいいムリをした…」



『ーーーゼッタイに退院するんだ!』


兄貴は必死だった。
出もしないオシッコを出す為にトイレに座ったり、食欲もないのに水を飲んだり。
見るに見かねて、カヨコやミドリが止める程だった……。




「……どうしてあの時、そうちゃんじゃなくて、「そうや」君が来たの…?」


悔しそうな顔してる彼に声をかけた。
この宿泊学習中に、チャンスがあったら聞こうと思ってたこと。
今、聞かないと、二度と勇気が出ない気がした…。


小石を掴んでる人の手が、石を放り投げる。
手から飛び出した石ころは、転がりながら川へ落ちて行ったーーーー



「…兄貴は……前の日から尿が出なくて…顔がスゴく浮腫んでた…。点滴もされてたし、動きたくても…ベッドから降りれない状態だった…。だからオレに…代わりに見送ってきて欲しいと手を合わせた……」



『一生のお願い』
もしかしたら、そんな思いがあったかのように、あの時の兄貴は必死だった。
ウソつきたくないと渋るオレに、「ついてもいいウソがある」とデマカセまで言って、コイツを見送りたがった…。


「兄貴はお前に『元気で…』と伝えて欲しいと言った。『また会いに来て』なんて言わなかった。あれは…オレの勝手なワガママだ…」
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