スマイル 〜約束した君へ〜

幼い「かわぐち そうや」は「きのした はるな」に恋をした。
可愛いかったその笑顔に、もう一度会いたい…兄貴にだけでなく、自分にも目を向けて欲しい…。
ーーーーきっと、そんな思いがあった…。




……悪い約束をしたような言い方をする彼を眺めた。
あの日、「そうちゃんじゃない」と、疑いもしなかったけど……


「……あの時ね、スゴくビックリしたの…」


第一印象から話そうとした。
あの中庭で、暑い日差しを受けてた時……



「…私の中のそうちゃんは、いつもどっちかって言うと「おっとり」したイメージだったのに、あの時の『そうちゃん』は違ってた。足音が軽くて、動きが速くて…。聞いたこともないくらい、声も大きかった…」



今覚えば、全然違ってた。
なのに、私はパパと会える事が半分頭にあって、そんなことにこだわっていられなかった。


「…気持ちのどっかでヘンだな…って思ってたハズなのに…『また会いに来て』って言われたことが嬉しくて…。だから、また会おうって約束した…。会えないと分かってたら…きちんと謝ってた。……ウソは……大キライだから……」


オトナに……主に両親に…ウソばかりつかれてた。
自分の存在を認めてもらえてなかった。
…子供の私はそんな事を何も知らず、ただ、パパが家に帰ってくる日を夢見てた……。





「……私ね……私生児なの……」


思いきって打ち明けた。
これまで誰にも話したことがないヒミツ。

振り向いた「そうや」君の顔が、驚きで固まってたーーーー

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