スマイル 〜約束した君へ〜
「パパにはきちんと奥さんがいて、ママとは結婚してなかったの……」



『パパとは離婚したのよ…だから、はるなは、ママとママの実家で暮らすの…』


病院を退院した次の日、そう説明された。
パパは寂しそうな顔をして、私のことをぎゅっと抱きしめた。


『……ごめんよ…』


か細い声しか覚えていない。
それを最後に、今日までパパとは会わずにきたから。




「…私がそれを知ったの…風見に受かった後……戸籍謄本取りに行って、初めて知った……」



3月初め。
細かい雪が降ってた。
暦の上では春だったのに、ちっとも春らしくない日で、北風が…心の中を吹きすさんでた…。



「…スゴくショックで……でも、逆に納得もできた。パパが滅多に家に帰ってこなかった理由は(…だからだったんだ…)って、妙に理解した……」


ムリして少し微笑んだ。
「そうや」君は、どんな顔をしていいか迷ってるみたいに、視線をそらした。


「私…ママに聞けなかったの。なんで私を産んだのか…。奥さんのいる人の子供を産んで、困るのは自分のハズなのに…。生きてくのに、ジャマにしかならないのに…って……」


泣きたいけど、泣けなかった。
生きてる意味を見いだせなかった自分に、戻りたくなかったから。



「……私がそうや君に言ったあの言葉……あれ半分は自分宛て。そうちゃんと違って自分は生きてるのに、ヤケになっちゃいけないって思ったから……」


目の前で悪態ついてる人が、事実を知った時の自分に見えた。
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