スマイル 〜約束した君へ〜
「学校で入ってた損害保険が適用されることになったんだ。詳しい資料と説明書が入ってるから、請求するよう伝えてくれ」

(…メンドくせぇな…ってか、おめぇが行けよ…)


ついそう思っちまう。
ダイゴはいつもの愛想の良さで、「任せといて」と引き受けた。




6月に入り、制服は夏服になった。
病院に向かう電車の中で、まりんはヤツがこう言ってた…と話し始めた。


「ハルナ、風見の夏服が着たくて受験したんだって」
「へぇー…」

ダイゴが相槌。


「ブラウス3色から好きなの着ていいじゃん?それがイイって」
「単純…」


やっぱその辺は『余所者』だな。


「着れるうちに退院できるとイイよね。まだ、手術の日取りも決まってないんだろ?」
「うん…なんだか検査ばっかしてるって、この間ライン入ってた」
「検査?手術するのに検査するのか?」


イヤな予感。
頭のどこかで、兄貴のことを思い浮かべた。


「みたいよ。…だけど、少し炎症反応が高いんだって」


詳しい事はよく分からないと話す。


「まっ、行ってみたら意外に元気なモンだよ!こういう場合って!」


気楽なダイゴ。
それだとホントにいいんだけど……。


胸によぎる兄貴の顔。
検査ばっかしてる時は、決して状態が良くなかった。


(アイツ…大丈夫か…)


タダでさえ小せぇヤツだ。
人並み以上に体力もなさそうなのに、元気でいるもんだろーか。
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