スマイル 〜約束した君へ〜
……揺れる電車の景色を眺めながら、少し気になる。

兄貴とアイツの出会いの場所。
確実に過去に引きずられそうな予感に、落ち着かない思いがした…。




病院のドアをくぐった。
10年ぶり。
あの頃と同じ、病院特有のニオイに息を止める。
異様なまでの消毒薬とクスリっぽいニオイ。
これだから、あんま来たくねぇんだ。実際は。


受付で病室を聞いた。

「3階の305号室だって」


若いから階段で行こうぜ…!とダイゴ。
オメェはどこまで元気なんだよ。

夕方の時間は食事が近いこともあって、いろんな制服着た人達が行き交う。
皆、見たことあるような気がするのは、それだけここに通いつめてた…ってことだ。


「…あっ!ココだよ!305!」


まりんが元気よく指差す。


(……個室か)


ますますイヤな予感。
個室にさせられるって事は、状態が悪いって意味合いだから。



「ハルナー?いるー?」


明るくドア開ける。
御宅訪問じゃねぇぞ。おいっ。


「…まりんちゃん!ダイゴ君も!…」


元気そうな声がした。


(なんだ…心配する程でもねぇじゃん…)


ひょこ…っとダイゴの後ろから顔覗かした。


「…そう……河口君…!」


オレだけ名前言い直しかよ。


「元気?具合どう?」


ダイゴとまりんが近寄る。


「元気…だと思う。退院させてもらえないけど」


引きつった笑い。
顔色、少しヘンかも。


「オリエンテーリングのブービー賞もらったから持って来た!一緒に食べよ!」


ジャーン…って、駄菓子の袋見せる。
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