スマイル 〜約束した君へ〜
(でも…あれはセンパイへの腹いせだったしな…)


潔く謝ればいいんだろーけど、どうもその辺、上手くできねぇ。
まりんだけじゃなくて、アイツのことも同じ。


「ハルナ、喜ぶかなぁ…」


ウキウキしながら、まりんがドアをノックした。
返事がねぇ。
オレ達は顔を見合わせて、ゆっくりドアを開けた。


「……ハルナちゃん?」


センパイの高い声が病室に響く。
し…んと、静まり返った部屋。
アイツの姿はない。


「どこ行ったんだろ…。検査かな?」
「トイレとかじゃない?待ってようよ。ココで」


センパイとダイゴが中に入る。


「私、トイレ見てくる」


まりんが走り出す。


「…オレ、その辺ブラっとしてくるわ…」


病室はニガテ。特に個室にはイヤな思い出しかねぇから。




病院の階段下りて歩いてく先は中庭。
兄貴の代わりに、アイツに会いに行った場所。
あの後、行く気にもならず、とうとう最後まで足を運べなかったトコ。


(今、どうなってんのかな…)


あの頃の様子は殆ど覚えてねぇ。
確か、庭の真ん中に噴水みたいのがあったよな…って程度。

ロビーの反対側に見える大きな窓。
売店の横を抜けると近道だ…って、兄貴が教えてくれた通りを歩く。


ガチャ…と、重い扉を開けた。
梅雨の晴れ間が真夏のような日差しを注いでる。


「アッチー…!」


半袖着てても暑い。
なのに、その中で長袖着てるヤツがいた。
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