スマイル 〜約束した君へ〜
(しようがねぇな…)


兄貴の時と同じ気がする。
あの頃もよく、日光浴に付き合った。



「……そうや君と会ったの…あの噴水の向こうだったね…」


噴水の向かい側を見たまま、ヤツが話し始めた。


「大っきな声で名前を呼ばれて…誰が来たのかと思った…」


10年前の懐かしい記憶。
反対側の位置から見てると、あの頃の自分達が見えてきそうだった…。


「そうちゃんだとばかり思ってた…だけど、会いに来てくれたのはそうや君だった……私…前にも言ったけど、あの時…そうや君が来てくれて、ホント嬉しかった……。元気なそうちゃんに、未来分けてもらった様な気がしたから……」


いつもよりもゆっくりした喋り。
こんな緩慢な話し方だったかな…って、こっちが疑問に感じた。




「………私ね…今度の手術で、腎臓一つ、取ることになったの……」


イキナリな告白にビックリしてヤツを見た。
顔色の黒さが目立ってる。
日差しを浴びて黒くなったんじゃねぇ。


この顔色の黒さは………



「腎臓にね……砂が溜まってて……動いてないんだって……」



マジメな顔で言われた。
目の奥に悲しそうな色が浮かんでる。
その瞳に映る、自分の顔が驚いてた……。



「……それ、誰から聞いたんだよ……」


あの時、ママが泣いてたことに関係アリか?
でも、そんな重大なこと、親から話すか?
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