スマイル 〜約束した君へ〜
沈み込んでく意識の中、そう願った。
そうちゃんの優しい声が聞こえてくる。

柔らかくて、優しくて、語尾が少しはね上がるように、私のことを呼んでたーーーーー




『は・る・な・ちゃん…』


ドアの隙間から顔覗かしてる。
トコトコ…と歩いて来る姿がペンギンみたいだな…って思った。


『…中庭にね、面白いサボテンの花が咲くんだ。見に行こう…』


手を伸ばされた。
その手に乗せた自分の手が、子供の頃みたいに小さかった。


『…どんなお花が咲くの?』


ワクワクしながら聞いた。


『まっしろいお花で、とってもいい香りがするんだよ!月下美人って名前なんだ…』

『月下美人…?キレイなお花…?』


夢見心地だった。


『そうだよ。とってもキレイなんだ…。だから……僕と一緒に行こう…』


そうちゃんの声が響く。
手をしっかり握ったまま、私はそうちゃんの後ろを駆けるように…ついて行く……。



闇の中を、まだ見ぬ花を目指してーーーーー



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