スマイル 〜約束した君へ〜
「きのした はるな」は驚いて、とにかくナースコールを押したらしい。


『早く来てっ!!「そうちゃん」が痛がってるっ!!!』



『可哀想なくらい、一生懸命だった』


思い出話をする兄貴の顔は嬉しそうだった。


……看護師たちは血相変えて飛んできたらしい。
いつ急変してもおかしくない兄貴の病状を、皆、理解してたからだった。


『そうちゃん⁉︎ どうしたの⁉︎ 』


大騒動になってしまい、兄貴は収拾がつかなくなった。
ウソだとも言えなくなって、そのまま病室に連れて行かれた。



『……叱られた…』


保育園からお見舞いに行ったオレに、兄貴はショボくれた姿を見せた。


『…はるなちゃんとフツウに話がしたかっただけなのに…分かってもらえなかった…』


医師や看護師から、こっぴどく叱られたらしい。
どうしてそこまでして、「きのした はるな」にこだわるのか、オレにはサッパリ分からなかった……


『……そうちゃんは、はるなちゃんが好きなんだねぇ〜』


カヨコがそう言うと、兄貴の顔が真っ赤になった。


『はるなちゃんに笑って話して欲しかったんだ。…お友達になりたかったんだ…』


優しく声をかけるカヨコの言葉に、兄貴は小さく頷いた。


『…はるなちゃん、カワイイから…笑ったらもっとカワイイと思ったから……』


「かわぐち そうま」の初恋。
幼いオレには、サッパリ理解できなかった。
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