スマイル 〜約束した君へ〜
「おはよう!皆!よく眠れたか⁉︎ 」

緒方さんが爽やかな笑顔で入ってくる。
昨日と同じネクタイ。


(学生か…こいつ……)


実習の頃から見てるせいか、どうにも『先生』らしくねぇ。
こんなだから、鳥たちにもバカにされる。



「今日はこれから学部全体のオリエンテーションある!その後、前期の係決めをやるからな!」


ザワザワする室内を収めることもできないから、緒方さんの声は自然と大きくなる。
静かだったのは昨日だけ。
今日のような騒々しさが、いつもの『風見学園』の風景だ。


昨日のように並んで体育館へ進む。
でも、整列しないのも鳥たちの習慣。


「…さっき、どこ行ってたんだよ⁉︎ 」


ダイゴが後ろから寄っかかってきた。


「どこだっていいだろ!」

穂波センパイがいるかどうか、図書室を見に行ったなんて言えねぇからテキトーに濁す。


「アヤシーなぁ…隠さないで教えろよ!」
「隠してなんかねぇーよ!」


叩いたり蹴ったり。

あいつの目が、その様子をじ…っと見てた。


『他所者』は輪に入れない。
結束力の強い鳥たちの仲間になんて、そうそう入れても貰えない。
だから、こいつが誰とも話せないでいるのもムリはねぇ。


「…ハルナちゃん、混ざる?」



ダイゴが振り向く。
驚いたように首を振って、「きのした はるな」は俯いた。


「…オンナなんか誘うなっての!」
< 28 / 168 >

この作品をシェア

pagetop