スマイル 〜約束した君へ〜
「ここでもテニスやんの?『風見』のテニスは軟式じゃなくて硬式だけど…」


親切にページ開けてやってる。
それを一緒に覗き込んで、ヤツが小さく答えた。


「テニスはもういい…。皆に迷惑かけるから…」

気を使わせてばかりいたんだ…と、ダイゴに訳を話した。


「私だけ、3年になっても試合に出れなかったの。だから、友達が気にして…。そんな思い、誰にもさせたくないし…自分も、したくないから…」


鈴のような声。
聞いてると、あの日を思い出す。
少しだけトーンは低くなったような気がするけど、喋り方がやっぱり変わらねぇ…。


「ふぅーん。…じゃあオレ達と同じ『バドミントン部』に入らない⁉︎ ソウヤもオレも、小学部から続けてんの!」


バカなことを言い出すダイゴを振り返った。


「バドミントン…?」


二つに髪を結んだヤツが聞き返す。


「ちょっ…ダイゴ!」


止めようとして声を出した。



「イテッ!!」


頭に痛みが走った。
見上げると、コワイ顔した緒方さんが、手をゲンコツにして立ってた。


「さっきから喋ってばかりいるだろ!静かにしろ!お前ら高校生なんだからっ!」


ダイゴにも同じくゲンコツ。



「ってぇーなぁ…手加減してくれよ!ガタちゃん!」

「するかっ!それにガタちゃんじゃない!先生だ!!」



珍しくマジギレてる。
オレとダイゴは顔を見合わせて、一応言うことを聞くよう目配せした。
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