スマイル 〜約束した君へ〜
「ほら、ここ!『木下陽菜(きのした はるな)ってある!」

オレとダイゴの間の名前。邪魔するかのような文字。


(きのした…はるな…?)


遠い記憶が蘇る。

あの日、兄に頼まれた約束ごとを果たしに行った時、そこにいた女の子の名前が……


(『きのした はるな』…って、言ったような……)


同姓同名の別人に違いないと思いつつ、オンナの顔を確かめた。

くるくるとよく動く目は小さくて丸い。
輪郭もどちらかと言うと丸っぽくて、鼻は少し低めかなって感じ。
あっ、でも、唇は形いいかも…


観察ついでに制服眺める。
編入生の印、ネクタイに鶏のマーク。


(やっぱ、他所者か…)


生粋の『風見鶏』のオレ達にはない刺繍。
編入生の印を持つ者を、オレ達小学部からの生徒は『他所者』と呼んでる。


「ねぇママ…この人の名前、そうちゃんと同じじゃない⁉︎ 」


オンナが指差す。


(ゲッ!何だよ!オレの名前じゃん…!)


「…あら、ホント。字も似てるみたいよ」


お水系ママが近寄って見る。

「まさか、あのそうちゃんじゃないよね⁉︎ 」

期待してるような弾む声。

「まさか……それはないと思うけど…?」

戸惑うお水系ママ。

「もしそうだったらスゴいと思わない⁉︎ 10年ぶりの再会になるんだよ!あの退院の日から…!」


(ーーー『退院』…?)
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