スマイル 〜約束した君へ〜
「あの…だから、そんなの困ります…!」


手首捕まれてる。
必死の形相してる割に、相手には伝わってねぇ。


「…何してんっすか⁉︎ 」


間に割り込み。


「コイツ、オレのダチなんだけど…何か用事?オッサン!」


どう見ても20代のサラリーマン風だけど、オレからしたらオヤジと一緒。


「手ー離してくんない?ケイサツ呼ぶよ⁉︎ 」


スマホ取り出す。
イマドキは便利だなぁ…ってチョット思った。


「こ…こっちは悪いことなんかしてねぇよ!」


パッと解き放たれる手首。さっとアイツが隠す。


「おネェちゃん、またね!」


ウインク残して逃げた。呆れるように振り返る。


「アホかお前は!何やってんだ!人を待たせて!」


ポンポン言いたいこと言う。それからライン送った。


『小娘一人発見!ヘンなセールスに捕まってた!』


すぐに既読される。これで皆が来る筈だ。


「…ほら、向こうで待ってよーぜ!」


先に歩き出す。ちょこちょこ付いてくる。
「きのした はるな」のカッコ…まるでお姫様だな。


「…お前ん家、この界隈じゃねぇのかよ⁉︎ いつもあんなのに捕まってんのかよ⁉︎ 」


振り向かずに質問。ヤツが小さな声で答える。


「うん…よく話しかけられる…」


話しかけられる…って言うより、どう見ても誘われてるっぽかったぞ!と言いたくなる。


(やめよ…コイツに何言ってもムダそうだ……)
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