あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―
プロローグ
「なぁ……朱(しゅう)」
「……なーに?」


真っ白な病院の個室の、真っ白なベットの上に上半身だけを起こして窓の外を眺めている青年がベットの横にある椅子に座っている朱と呼んだ少女に呼びかけた。


「なんつーか、笑っちまうよなぁ」
「秀(ひで)……」



秀と呼ばれた青年。もとい秀俊(ひでとし)は、とても苦しそうな声を出している朱とは、対称的にまるで世間話でもしているかの様な軽さで朱に語りかける。



「なんか腹減ったなーと思って行ったコンビニの帰りに泥酔情態のトラックに轢かれて事故るとか……」
「……」
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