あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―


『やっぱ、なんでもねぇ』
『うわっなにそれ超気になる』


こんな風にもったいぶられて気にならないはずが無い。朱は向かい側にある秀俊の顔にずいっと己の顔を近づける。


『おわっ!心臓止まったらどうすんだ‼』
『そんな簡単に心臓が止まってたまるか‼』


まぁ何の兆候も無しにいきなり彼女の顔が目の前にどアップ状態であったらこんな風に言い返してしまったとしても仕方の無いことだろう。
こんな扱いづらい女と一緒にいられるような物好きって俺だけなんじゃね?と今だ目の前にある白い顔を見ながら密やかに考える秀俊だったが、そこまで考えて自分で自分を物好きと言っている事に対して無性に悲しくなってきた。
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