あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―
「……っ!」
その言葉に思わず、顔を背けている秀俊に手を伸ばした朱だったが、ピタリ、と伸ばした手を止めてしまう。
「秀」
そう、心の内から問いかける。今の朱には、今の秀俊の姿を見てそうする以外の答えが見つからなかった。それしか、無いと思った。
「秀」
今度は、口に出して呼んでみる。彼は、朱の事を振り返る事無くそのまま窓の外を見続けていた。朱は、そのまま秀俊を見続けている。分かっていた、振り返ってくれない事何て、だって、彼は、今。