あと一歩の勇気を―君が全てを失ったあの日、僕らは一体何ができただろうか―
第三章

心の傷は深く

「秀俊君やわらわとデートに行こうか」
「……大丈夫か、頭」


唐突に言われたデートへの誘いよりも秀俊にとっては、朱のふざけた口調の方が何だか頭につっかかった。元々ふざけたやつではあったが……ここまでの域に達していたとは……。


「何か失礼な事考えてるな?」
「てっ」


秀俊の頭にほど良い勢いのチョップが当たる。
大して痛くは無いのだが、痛いと口に出してしまうのが人の性(さが)だ。


「せっかくの彼女からの誘いに大丈夫か、頭とか聞かないでしょー?普通は」
「……その普通を俺は何度お前によって覆されてきたんだろうなァ」

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