白雪姫な君に
屋上は日が照っていて、いくら4月の初めと言っても少し暑いくらいだった。
腕を掴まれたまま呆然と立ち尽くす桜庭茉莉に、大丈夫かと聞けば、こくり、小さく頷く。
その動作がどうしても可愛くて。
(いま思えば、一目惚れだったのかな。)
「あ、の春川、さん。」
「花希でいーよ。花と希望と希で、はるき。」
「…私は、桜庭茉莉、です。」
茉莉でいいです、と言って、にこ、と笑った、桜庭茉莉…じゃなくて、茉莉。
掴んでいた手を離して、すとんとその場に座ると、茉莉は焦ったように、あの、と言った。
「どうしたの?」
「授業、始まっちゃいます…。」
「あぁ。」
授業ねー、と気だるげに言って寝転ぶと、茉莉は焦ったように行きましょうと腕を引っ張った。