【超短編】私の隣
そのファイルには、初めてでも仕事がスムーズに誰でも、やりやすいようにと、メモ書きが置いてあったのだ。




昨日、自分の仕事が終わってから、わざわざ彼が、仕事が解り易い様にと、置いておいてくれたのだ。




彼の優しさが、半人前で仕事が充分出来ず、彼の足をひっぱっていると、感じている私の気持ちに、重くのしかかり、私は何も出来ない自分自身が嫌でしょうがなく、何度も泣いたのかもしれない。




「一度言って聞かなかったら、もう何も言わない。」


というのが、彼の口癖のようなものだった。




だから彼は、誰かが同じ失敗をしたとき、何も言わずにフォローしていた。




もちろん彼は、愚痴も言わずに人一倍仕事をし、仕事もできた。




彼は、すごく優しい人だ。




『彼は、どんな人か?』と聞けば、優しい人と、返事が返ってくるだろう。




それは、一緒に働いている人達も認める。




しかし、私は、彼を優しいけれど、本当は冷たい人なのかもしれないと思う。




彼が、同じ事を何度も言わないのは、面倒くさいからだ。




いちいち人に説明するより、自分でやった方が早いと思っている。




それは、優しさではないし、周りの人間は成長しないと、私は思う。




そんなことで、冷たいと判断をするのは、おかしいのかもしれない。




でも、そんな冷たい面を持っていることも、優しいだけの人ではない、彼の魅力なのかもしれないと、私は感じた。




そして、家族を大切にしていた。
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