Fly*Flying*MoonLight

AM5:15 薔薇園

「んん……」
 おばあちゃんに教わった歌を歌いながら、薔薇の花を摘む。満月の光をたっぷり浴びてから、朝露に濡れた薔薇の花は、魔力も強大。花びらの一枚一枚が、生き生きしてる。
(うん、いい感じ。この分だったら、エキスにしてもいいかな……)
 そういえば、化粧水とクリーム、また作って欲しいって言われてたっけ。今日の薔薇なら、いい出来になりそう。
 ……そんな事を思いながら、薔薇の花を籠に入れていた。

 ――昨夜は私もいろいろあって疲れてたのか、ぐっすり寝ちゃった。和也さんはどうだったのかな……。
 おじいちゃんの部屋を見上げると……
 ……こちらを見ている和也さんと目があった。

 おじいちゃんもあんな風に、自分の部屋の窓から、私とおばあちゃんが薔薇を摘むのを見てたっけ……。
 なんだか懐かしくなって、思わず笑みがこぼれた。
「……おはようございます」

 和也さんは、ちょっとびっくりしたみたいだったけど、
「……おはよう」と、返してくれた。

「もう終わりますから。朝食は六時ぐらいでいいですか?」
「……ああ」
「じゃあ、玄関ホールの右手が食堂ですから。そこに来て下さいね」
 ちょっとぼさぼさ気味の髪。ストライプのパジャマ姿。普段のびしっとした感じは、どこいったんだろ。和也さんは、こちらが驚くほど……無防備、に見えた。

 もう一度、会釈して、家の中に入った。
 ホール奥にある、地下室への扉を開く。ドライフラワー用とアルコール漬けにするのと分けなくちゃ……。
 私は朝食の準備の前に、薔薇の花を乾燥用と抽出用に仕分け、それぞれ処理を行った。
(三日後にもう一度様子を見て……それからね)

 地下室の扉を締めて、階段を上がる。そうして、私は台所へと向かった。
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