Fly*Flying*MoonLight

AM7:45 出勤途中

 車から見る街の景色は、電車とは違う色に見えた。
「あの……」
 私は、隣にいる和也さんに声をかけた。
「なんだ?」
 スムーズな運転。クッションも効いてるのか、乗り心地はすごくいい。ハンドルを握る和也さんの横顔を、そっと見た。
(……本当、綺麗な顔だなあ……この人……)
 不覚にも、そう思ってしまった私。ちょっと頬が熱くなる。

「私、最寄駅までで結構ですから」
「何言ってる。同じ場所に出勤だぞ? 乗っていけばいいだろ」
「そ、それじゃ、目立つじゃないですかっ!」
 ――社員の前で、社長の車から、降りる私。
 ……どう考えても、絵にならない、どころか……
(社長ファンに、嫉妬の視線で焼き殺されるかもしれない……!)

「社長と一緒に出勤なんて、周りに何て言われるかっ!」
「……どうとでも、言わせておけばいいだろう」
 前を向いたまま、和也さんが冷静な声で言う。
「噂になりたくないんです。もう充分目立ってるっていうのに……っ」
 和也さんがちらり、とこちらを見た。
「……じゃあ、『お前は俺のものだ』って宣言するか?」
「や、やめて下さいっ!!」
 顔が赤くなるのが分かる。
 す、少しはまともなのかと思ったけど、やっぱりドSだわ、この人っ!!

 もんもんとしてる私の隣で、涼しい顔をしてハンドル切ってる和也さん……私は深~いため息をついた……。
< 12 / 65 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop