Fly*Flying*MoonLight
PM8:00 お風呂
「ふう……」
顎までお風呂につかる。温まるなあ……。男の子を見ると、真っ白だった頬に赤みがさしていた。
……お風呂、というか温泉に近いかも。十人ぐらい余裕で入れそうな大きさ。ライオンの彫刻の口から、お湯が流れ出していた。
(さっきの、方……)
武田様、に似てたよね……。
髪の毛もふさふさで、しわもなかったけど……。もしかして、息子さん、とか? 私はとりとめもなく、考えていた。
両手でお湯をすくう。硫黄の匂い……この水質……『温泉』だよね、これ。
やっぱり、ここ、普通のお家、ってわけじゃなさそう……。
身体が温まって……少し、魔力も回復したか……な……。
「もうそろそろ、あがろうか?」
「……」
赤くなった顔で、男の子が頷いた。
身体、ぽかぽか……。髪をふかふかのタオルで拭いていたら、背中に小さな手、の感触。
振り返ると、男の子が物言いたげな目で私を見上げていた。
「……気になる? このあざ」
ちょうど背中の真ん中にある、赤みがかった薔薇の形のあざ。
タオルでふんわりと男の子の髪を覆って、ふきふきする。
「これはね、魔女の印なの。私の家では、魔力を持った女の子の身体のどこかに、このあざがあるのよ」
「……」
「私のおばあちゃんは、右肩にあったわ」
うん、身体拭けたよね。タオルでこの子の身体を覆う。
ばふ。大きな白いバスローブ。
(ぶかぶかだなあ……)
ちょっと袖を折る。男の子の袖と裾も、折ってあげた。
私とこの子の服は、脱衣所にあった、洗濯機の中で回してる。
めずらしいなあ……まだ二槽式なんだ……
(まあ、うちもそうなんだけど……)
脱衣所の隣に、小部屋があって、そちらにアイロン台もあった。あとで使わせてもらおう。
『お好きにお使い下さい』
本当に、何も言われないし……放りっぱなし……?
男の子の手を引き、脱衣所を出る。
「お部屋、分かる?」
こくん、と頷いて、私の手を引っ張る。
あの女性も、武田様に似た男性も
(……この子の事、全然心配してなかった)
なんだか、胸が痛い……。
私の手を握る、小さな温かい手。
……大事にしてもらうべき、なのに……
笑っているのが、普通なのに……
……どうして……
物言いたげに、私を見る瞳。
……私は、思わず廊下の真ん中で膝をつき、彼を抱きしめた。小さな身体。とくんって、心臓の音がする。
「大丈夫……だから」
「……」
ちょっと身体を離す。まん丸な瞳。驚いているような色。
こんなにかわいいのに。
もっと愛されているべき、なのに。
私は、また頭をなぜなぜしたした後、立ち上がって、彼に言った。
「……お部屋に行ったら、何か食べるもの作るね? お腹すいたでしょ?」
「……」
また、こくん、と頷いた。
「じゃあ、行こうか」
彼は、再び、私の手を引っ張った。
顎までお風呂につかる。温まるなあ……。男の子を見ると、真っ白だった頬に赤みがさしていた。
……お風呂、というか温泉に近いかも。十人ぐらい余裕で入れそうな大きさ。ライオンの彫刻の口から、お湯が流れ出していた。
(さっきの、方……)
武田様、に似てたよね……。
髪の毛もふさふさで、しわもなかったけど……。もしかして、息子さん、とか? 私はとりとめもなく、考えていた。
両手でお湯をすくう。硫黄の匂い……この水質……『温泉』だよね、これ。
やっぱり、ここ、普通のお家、ってわけじゃなさそう……。
身体が温まって……少し、魔力も回復したか……な……。
「もうそろそろ、あがろうか?」
「……」
赤くなった顔で、男の子が頷いた。
身体、ぽかぽか……。髪をふかふかのタオルで拭いていたら、背中に小さな手、の感触。
振り返ると、男の子が物言いたげな目で私を見上げていた。
「……気になる? このあざ」
ちょうど背中の真ん中にある、赤みがかった薔薇の形のあざ。
タオルでふんわりと男の子の髪を覆って、ふきふきする。
「これはね、魔女の印なの。私の家では、魔力を持った女の子の身体のどこかに、このあざがあるのよ」
「……」
「私のおばあちゃんは、右肩にあったわ」
うん、身体拭けたよね。タオルでこの子の身体を覆う。
ばふ。大きな白いバスローブ。
(ぶかぶかだなあ……)
ちょっと袖を折る。男の子の袖と裾も、折ってあげた。
私とこの子の服は、脱衣所にあった、洗濯機の中で回してる。
めずらしいなあ……まだ二槽式なんだ……
(まあ、うちもそうなんだけど……)
脱衣所の隣に、小部屋があって、そちらにアイロン台もあった。あとで使わせてもらおう。
『お好きにお使い下さい』
本当に、何も言われないし……放りっぱなし……?
男の子の手を引き、脱衣所を出る。
「お部屋、分かる?」
こくん、と頷いて、私の手を引っ張る。
あの女性も、武田様に似た男性も
(……この子の事、全然心配してなかった)
なんだか、胸が痛い……。
私の手を握る、小さな温かい手。
……大事にしてもらうべき、なのに……
笑っているのが、普通なのに……
……どうして……
物言いたげに、私を見る瞳。
……私は、思わず廊下の真ん中で膝をつき、彼を抱きしめた。小さな身体。とくんって、心臓の音がする。
「大丈夫……だから」
「……」
ちょっと身体を離す。まん丸な瞳。驚いているような色。
こんなにかわいいのに。
もっと愛されているべき、なのに。
私は、また頭をなぜなぜしたした後、立ち上がって、彼に言った。
「……お部屋に行ったら、何か食べるもの作るね? お腹すいたでしょ?」
「……」
また、こくん、と頷いた。
「じゃあ、行こうか」
彼は、再び、私の手を引っ張った。