Fly*Flying*MoonLight
PM10:00 脱衣所~玄関ホール~あの子の部屋
「あ……止まってる」
私は洗濯機のふたを開けた。脱水が終わってる。かごに入れて、隣の部屋に運ぶ。
「ふう……」
やっぱりバスローブだけだと、落ち着かなかったわ……。
脱水の終わった服にアイロンをかけて、少し生乾きだったけど、自分の服を着た。ポケットに、元々入ってた物とハーブの瓶、と入れる。バスローブを洗濯機に入れておいた。
あの子は泣き疲れて、寝てしまった。その間に一階に降りて来たんだけど……。
あの子、ここにいて、いいのかしら。……どう考えても、邪魔もの扱いされてる。
(他に、誰かいないのかしら……ちゃんと、あの子の事、考えてくれる人が)
――突然、胸がざわついた。
「――!?」
(なに、この……臭い……!?)
――揮発性の臭いに混ざる……紛れもない、悪意。
(玄関ホールの方から!?)
私は急いで、玄関ホールへと向かった。
***
「な……!!」
充満する、ツンとくるような臭い。ポリタンクを持って、ホールの床に、液体を撒いている人、がいた。
「何してるんですかっ!?」
私が叫ぶと、はっとしたようにこちらを見た。その瞳が……血のように赤く見えた。
「ちっ……!」
旦那様、と呼ばれた人がポリタンクを床に投げ捨てる。手には……ライター!?
身体が硬直する。闇に染まった目が、私を睨みつけた。
(闇に……支配されてる……っ!?)
「……あのガキ共々、焼け死ぬがいい」
そう吐き捨てるように言って、彼は玄関のドアを開け、外から火のついたライターを思いきり投げ入れた。
――一瞬、でホールが、火の海になった。
「風よ、盾となり炎を遮れ!」
天井まで立ち上り、襲ってきた炎が、風に遮られ、左右に分かれた。でも、まだ魔力が回復しきってない……!
「早く、逃げないと……」
玄関はもうだめ。窓から……っ
私は、あの子の部屋を目指して床を蹴った。
***
「……大丈夫っ!?」
勢いよく扉を開ける。
「……っ!」
あの子が、ベッドの上で悶え苦しんでいた。がたがた震えて、丸くなってる……!?
何? この子の……恐怖!?
影が男の子を覆い隠そうとしていた。私はあの子に駆け寄り、思い切り抱きしめた。
「大丈夫だから!」
「……」
何も映ってなかった目に、光が戻る。
「さあ、逃げるわよ。しっかりつかまっていてね」
私は男の子の身体を抱きしめたまま、体当たりして窓ガラスを破り、外に出た。
私は洗濯機のふたを開けた。脱水が終わってる。かごに入れて、隣の部屋に運ぶ。
「ふう……」
やっぱりバスローブだけだと、落ち着かなかったわ……。
脱水の終わった服にアイロンをかけて、少し生乾きだったけど、自分の服を着た。ポケットに、元々入ってた物とハーブの瓶、と入れる。バスローブを洗濯機に入れておいた。
あの子は泣き疲れて、寝てしまった。その間に一階に降りて来たんだけど……。
あの子、ここにいて、いいのかしら。……どう考えても、邪魔もの扱いされてる。
(他に、誰かいないのかしら……ちゃんと、あの子の事、考えてくれる人が)
――突然、胸がざわついた。
「――!?」
(なに、この……臭い……!?)
――揮発性の臭いに混ざる……紛れもない、悪意。
(玄関ホールの方から!?)
私は急いで、玄関ホールへと向かった。
***
「な……!!」
充満する、ツンとくるような臭い。ポリタンクを持って、ホールの床に、液体を撒いている人、がいた。
「何してるんですかっ!?」
私が叫ぶと、はっとしたようにこちらを見た。その瞳が……血のように赤く見えた。
「ちっ……!」
旦那様、と呼ばれた人がポリタンクを床に投げ捨てる。手には……ライター!?
身体が硬直する。闇に染まった目が、私を睨みつけた。
(闇に……支配されてる……っ!?)
「……あのガキ共々、焼け死ぬがいい」
そう吐き捨てるように言って、彼は玄関のドアを開け、外から火のついたライターを思いきり投げ入れた。
――一瞬、でホールが、火の海になった。
「風よ、盾となり炎を遮れ!」
天井まで立ち上り、襲ってきた炎が、風に遮られ、左右に分かれた。でも、まだ魔力が回復しきってない……!
「早く、逃げないと……」
玄関はもうだめ。窓から……っ
私は、あの子の部屋を目指して床を蹴った。
***
「……大丈夫っ!?」
勢いよく扉を開ける。
「……っ!」
あの子が、ベッドの上で悶え苦しんでいた。がたがた震えて、丸くなってる……!?
何? この子の……恐怖!?
影が男の子を覆い隠そうとしていた。私はあの子に駆け寄り、思い切り抱きしめた。
「大丈夫だから!」
「……」
何も映ってなかった目に、光が戻る。
「さあ、逃げるわよ。しっかりつかまっていてね」
私は男の子の身体を抱きしめたまま、体当たりして窓ガラスを破り、外に出た。