Fly*Flying*MoonLight
MoonLight*Short*Story
マリーSideのStory1
……あの人は最期まで、微笑んでいた。
『楓が愛する人を見つけて、幸せになるのを見られなかったことだけが残念だよ』
『だが、わかっているよ。あの子は、いつか必ず誰か、に出会う。私が君と出会えたように、ね』
……そう言って、眠るように私の前から立ち去って行った。
***
「おじいちゃーん……」
楓が薔薇園から手を振る。車いすの上のあの人は、目を細めて窓から手を振り返した。
「今日もいいお天気ねえ……」
私は青い空を見て呟いた。
「……マリー」
「はい?」
ゆったりと笑いながら、あの人が言う。
「……ありがとう。君を愛させてくれて」
「何言ってるのかしら? 結構強引だったくせに」
ふふっと私も笑う。
今日の陽だまりのような、優しい声であの人が続けた。
「……私は君を残して逝く事になるけれど」
「……」
「君を……愛した時間は消えない」
「……」
「だから……」
あの人が手を伸ばして、私の頭をなぜた。
「どうか、私が逝っても悲しまないでほしい。君が私と同じ時間を共有してくれて……とても幸せだった、から」
「あなた……」
私は、あの人の手に自分の手を重ねた。
「私も……幸せですよ? 今まで生きて来た中で一番」
「……」
「人を愛する事を怖がっていた私に、そうしてもいいんだって教えてくれたのは、あなたですから」
少し困った様な笑顔をあの人は見せた。
「……本当は私も迷ったけれどね……私が君を愛する事で、君を悲しませる事になるんじゃないかと」
「……」
「魔女である君は、人間の私よりも長命だ。君にとって、人と関わる事は別れを意味する。どんなに愛したとしても、自分を置いて、皆いなくなってしまう……」
……そう。だから、一つの場所に住む事もなく、深く人と関わる事もなく、ずっと一人で生きて来た。
『あいつ、魔女だ』
『いつまでも歳を取らないなんて、不気味』
そう言われて、迫害された事もあった。
……だから、避けていた。
……誰か、と関わる事を。
……誰か、を愛する事を。
……誰か、と生きる事を。
……目の前のこの人が
『あなたが、そのままのあなたでいられるように
……その魔法をずっと使えるように、
……私が、あなたを愛するから』
そう、誓ってくれるまで。
『楓が愛する人を見つけて、幸せになるのを見られなかったことだけが残念だよ』
『だが、わかっているよ。あの子は、いつか必ず誰か、に出会う。私が君と出会えたように、ね』
……そう言って、眠るように私の前から立ち去って行った。
***
「おじいちゃーん……」
楓が薔薇園から手を振る。車いすの上のあの人は、目を細めて窓から手を振り返した。
「今日もいいお天気ねえ……」
私は青い空を見て呟いた。
「……マリー」
「はい?」
ゆったりと笑いながら、あの人が言う。
「……ありがとう。君を愛させてくれて」
「何言ってるのかしら? 結構強引だったくせに」
ふふっと私も笑う。
今日の陽だまりのような、優しい声であの人が続けた。
「……私は君を残して逝く事になるけれど」
「……」
「君を……愛した時間は消えない」
「……」
「だから……」
あの人が手を伸ばして、私の頭をなぜた。
「どうか、私が逝っても悲しまないでほしい。君が私と同じ時間を共有してくれて……とても幸せだった、から」
「あなた……」
私は、あの人の手に自分の手を重ねた。
「私も……幸せですよ? 今まで生きて来た中で一番」
「……」
「人を愛する事を怖がっていた私に、そうしてもいいんだって教えてくれたのは、あなたですから」
少し困った様な笑顔をあの人は見せた。
「……本当は私も迷ったけれどね……私が君を愛する事で、君を悲しませる事になるんじゃないかと」
「……」
「魔女である君は、人間の私よりも長命だ。君にとって、人と関わる事は別れを意味する。どんなに愛したとしても、自分を置いて、皆いなくなってしまう……」
……そう。だから、一つの場所に住む事もなく、深く人と関わる事もなく、ずっと一人で生きて来た。
『あいつ、魔女だ』
『いつまでも歳を取らないなんて、不気味』
そう言われて、迫害された事もあった。
……だから、避けていた。
……誰か、と関わる事を。
……誰か、を愛する事を。
……誰か、と生きる事を。
……目の前のこの人が
『あなたが、そのままのあなたでいられるように
……その魔法をずっと使えるように、
……私が、あなたを愛するから』
そう、誓ってくれるまで。