Fly*Flying*MoonLight

颯人(はやと)SideのStory

 ……初めてその女《ひと》に会ったのは

ある夏の昼下がりのこと。

 泥だらけの私を見て、
『大丈夫?』
 ……そう言って、優しく笑った。

 上品な日傘。風になびくスカート。銀色に近い金色の髪。夏の空よりも、蒼い蒼い瞳。

 ……その美しさ、に言葉が出なかった。

***

 ……ねえ、マリー。

 初めて出会ってから、次に出会うまでの間に、私は子どもから大人になっていたのに
 ……君は何一つ、変わっていなかった。

 でも、すぐに判った。あの時の、女性だと。
 ……魂が、同じだった、から。

 私が魂の色が見える事……陰陽師の血を引いているため、目に見えないモノが見える事を言った時、君はひどく驚いていたね。
『私が気味悪くないのですか? 十年も前と、全く変わっていないのですよ?』
『……あなたのように美しく優しい方が、どうして気味悪いのですか?』
 そう切り返すと、『変わった方』と言って君は笑った。

 私の方が先に逝く事が判っていたのに、
 君を愛してしまった事は
 君にとって、よかったのだろうか?
 君の時間を、私の時間に縛り付けてしまった事は。
 
 もし、私が
 ……君に悲しみ以外の感情を与える事ができたなら、
 それだけで、十分だよ。たとえ、君にとって短い時間でも……

 ……君を愛した事は、永遠に消えない、から。
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