Fly*Flying*MoonLight
次の日

AM5:00 楓の祖父の部屋

「……」
 小鳥の声。うっすらと目を開ける。……包み込むような薔薇の香り。使いこまれた艶のある木目の天井。徐々に思い出す。

 ああ……ここは、あいつの家、だ。

 ゆっくりと身体を起こす。自分でも驚くほど、身体が楽になっていた。いつも眠りが浅くて、すっきり起きることなどなかったのに。
 ……昨晩は、熟睡した、らしい。

 俺はベッドから降り、カーテンと古い木枠の窓を開けた。朝日が部屋の中に差し込む。
「……ん?」
 どこからか、聞こえてくる旋律。聞いた事は無いはずなのに、なぜか懐かしいような、不思議な歌声。

 ふと下の方を見ると……楓が、薔薇園の中、にいた。
 歌いながら、薔薇の花をカゴに摘んでいる。赤、白、ピンク、オレンジ……色とりどりの薔薇の花。
 ……髪はおろしたまま、だった。長い髪が風になびいて、ふんわりと踊っている。

 ――まるで絵画のような風景。

 俺は、しばらく、楓を見ていた。……いや、目が離せなかった。

 ――俺の魔女。

 楓は……多分、知らない。俺が……ずっと、彼女を……
 ――その時、楓がこちらを振り仰いだ。
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