この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
落武者にお姫様抱っこされ、白いワンピースの亡霊に付き添われて、忠明は出口から運び出された。
突如、学校の廊下に二人の亡霊が現れ、お化け屋敷前の廊下は大パニックに陥った。
保健室に移動するに辺り、道すがら彼らを見た人々は絶叫していた。
保険医も例に漏れず、驚嘆し、動揺し、「だ、誰が具合悪いの?」と、聞いてくる始末。
保健室に忠明を置いて、教室に戻る二人を見て、更に絶叫の輪は拡がる。
「なんか、これだけ驚かれるとヘコむね・・・。」
女の亡霊が、落武者に言う。
「同感だ。確かに最初は面白いと思ったが、段々腹がたってきた。」
落武者が女の亡霊に言う。
「新一君の技術は確かに凄いのだけれど、可愛さって、もう少し有っても良いと思うんだけど・・・。」
女の亡霊が、落武者に言う。
「所で委員長。ずっと気になっていた事が在るのだが・・・。」
落武者が女の亡霊に言う。
「平賀の事は、新一と呼んでいるのだな。」
女の亡霊の足が止まる。
「な、何よ!可笑しいかしら!」
女の亡霊の顔色が急に良く成った。
「いやぁ〜、なに、随分と愛くるしいなと、思ってな。」
落武者は女の亡霊を、からかって逃げる。
「もう!止めてくれる!からかわないでよ!」
女の亡霊が落武者を追う。
奇っ怪な、鬼ごっこが始まってしまった。
「もう、兄さん。ホント恥ずかしかったんだからね。
落武者にお姫様抱っこされて保健室まで運ばれるとか、あり得ないから。」
遙は、忠明に詰め寄った。
「だって、怖かったんだもん!」
忠明は保健室のベッドの上で、遙に叱られていた。
「って言うか、遙もカナも先に逃げちゃうんだもんな〜。ひでーよ、ホントに。」
「し、しょうがないでしょ!私たちだって怖かったんだから。でも兄さん、文化祭に来るなら来るって言ってよ。」
「へへ。ビックリさせようと思ってな。
そうしたら逆にビックリさせられて、この様だよ。」
「全然上手いこと言って無いからね。」
「手厳しいな、遙ちゃん。
に、しても、又四郎も未来ちゃんも凄まじかったな。あれは全部平賀がやったのか?」
「うん。そうみたい。凄いよね、平賀君。」
二人は保健室でさっきの顛末を話していた。
ちょうど又四郎も未来も自分の出番が終わり、明日の同好会の練習に剣道場へ向かっている所だった。
「明日は見に来れないからな。せめて今日はと思ってな。」
忠明は続けた。
「沖田と乙女ちゃんのクラスは何をやってるんだ?」
「えっと、お好み焼きを売ってるよ。」
「遙とカナは?」
「知らなかったっけ?私達は展示。授業の絵画を展示してるの。」
「あっ!そうだったな!見てないな。」
忠明はベッドから立ち上がって言う。
「お好み焼き食べながら、二人の絵画を見てみよう!」
「・・・。兄さん。どっちかにしてよね。」
この日、文化祭校内展示物及びクラス催し物コンテストの審査の結果、最優秀賞に輝いたのは、【絶対に入っては行けないクラスルーム】だった。
平賀だけは心底、大喜びしていた。
敢えて、受賞理由にはここで触れない。