この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
クラスメイト数名に取り囲まれた又四郎。
全員でリンチのように取り囲み一斉に攻撃する。
が、
又四郎は驚異の跳躍で、攻撃が当たる前に天井に触れ、落下を利用し、二人を目掛け蹴りを喰らわす。
顔面にモロに受けた二人は、机と椅子ごと掻き乱すように吹っ飛ぶ。
着地と同時に、一人に当て身を喰らわし、又、一人の腹部に拳を突き立てる。
床に崩れ落ちる二人。
残りの二人の両肩に手刀を喰らわし気絶させた。
「さあ、次はどいつだ?これでは腹ごなしにもならん。」
ガタンッ!
机を鳴らして立ち上がった男子生徒が居た。
副委員長の澤部一也(さわべかずや)だった。
「まあまあ、高柳君。僕達が悪かった。許してくれ。」
澤部は又四郎に歩み寄る。
「さあ、終わりだ。先生が来る前に後片付けをしてしまうよ。ほら、ほら。」
「怪我してる人は早退してくれ。後々面倒だからね。」
皆は、澤部の言う事を黙って聞く。
騒ぎはあっと言う間に収まった。
「委員長。平賀君。悪かったね。不快な気分にさせてしまって。みんなに代わり僕が謝る。すまなかった。」
澤部が頭を下げる。
委員長と平賀は黙って頷く。
こうして昼休みの騒動は終息する。
「あの澤部一也とか言う男・・・。」
又四郎は、心の中で舌打ちをする。
「高柳君。ありがとう助けてくれて。」
委員長が又四郎に言う。
「高柳君。無視したりしてごめん。そして、殴ったりしてごめん。」
平賀も又四郎に謝る。
「二人とも、わしの事で面倒を掛けてしまったな。」
又四郎も二人に謝る。
「時に平賀殿、あの澤部とは・・・。」
言い掛けて、背中に視線を感じた。
平賀をよく見ると、小刻みに震えている。
又四郎は後を僅かに振り返る。
そこには、憎悪と悪意に満ちた澤部の冷たい視線があった。
又四郎は、自分の席に戻る。
何食わぬ顔で正面を向いたまま、平賀に言う。
「そうか・・・。やはりあいつがこの部屋の黒幕か・・・。」
一瞬平賀はピクッと反応する。
その日は、それ以上何も起こらなかった。