この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
いつになっても起きて来ない又四郎を起こしに、遙は又四郎の部屋に入る。
「失礼しま〜す。又四郎、朝だよ〜。」
机の上には実に精巧で可愛らしい七福神が寄り添っていた。
「わっ!なにこれ、カワイイっ!!」
遙は思わず、口をついて出てしまった。
「う、う〜ん・・・。は、遙殿か!?」
飛び起きる又四郎。
内緒の物が見つかってしまったと、机の七福神を慌てて隠そうとする。
すかさず、遙は「又四郎なにそれ!又四郎が作ったの??」と、聞く。
「あ、う、うむ。実は遙殿。昨日はカナ殿と一緒に、ぷれぜんとと言うものを買いに行ったのだ。
だがなぁ〜いまいち良いものがなくて、たまたま立ち寄った家財家に良い枯れ具合の古木を見つけ、それを譲って貰い、こうなっている訳だ。」
長々と説明する又四郎。
「まあ、詰まりは、遙殿が産まれた時のお祝いと言うやつだ。受け取っていただけるかな?」
又四郎は弁天の根付けを遙に渡す。
遙は弁天の根付けを大事そうに受け取った。
そして、声を詰まらせて又四郎に微笑む。
「・・・。ありがとう。本当にありがとう又四郎。」
遙の瞳に涙が浮かんでいた。
「は、遙殿!泣くほど嫌なら、捨てて貰っても構わんぞ!す、すまぬ!変なものを!!」
又四郎は狼狽気味に、遙から弁天の根付けを取り上げようとする。
遙はそれを手で制して、又四郎に言う。
「うんうん。そうじゃないの。嬉しいの。本当に嬉しいの。」
涙が止まらない遙。
「気持ちが・・・。作ってくれた気持ちが、とっても伝わって嬉しくて。」
ばつが悪そうに頭を掻きながら又四郎は言う。
「日頃から色々世話になって、何から何まで色々善くしてもらって、拙者からは何も与えられないので、せめて感謝の気持ちをと・・・。」
又四郎は少し照れながら話した。
遙は弁天の根付けを大事に握り締める。
二人のやり取りを密かに見ていた忠明も、込み上げる物があった。
又四郎は忠明に毘沙門天の根付けを渡し、感激した忠明は又四郎を抱きしめた。
「き、気持ち悪いぞ!!」
「何とでも言え!俺はお前が大好きだ!!」
泣きたがりの忠明は、おいおい泣きながら又四郎を抱きしめた。
その日の日曜日。
家族3人で、回転寿司で食事をした。
回転寿司でも又四郎は色々とやらかすのだが、それは又、別の機会に話そう。