この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
学校を恐怖のドン底に陥れた又四郎の文字通り弾丸ライナーは、職員室の鉄の棚を破壊し、窓を粉砕し、めり込んで静止している。
警察は呆気にとられた。
機械で至近距離から狙わない限り、この破壊力はあり得なかった。
「どうしてこんな事をしたんだ。」
警察は又四郎に聞く。
「何度も言っているだろう!投げられた玉を思い切り打ち返しただけだ!」
「単純に打ち返した玉が、こんな威力でここまで届くわけがない!近距離から職員室に向かって、玉を打ち込んだんじゃ無いのか!」
そんな押し問答の末、野球部員に確認してみると、確かにバッターボックスから打ち返した玉だと裏付けが取れた。
それではと言う事で、警察は、同じ状況でやってみる事にした。
「それじゃ、ピッチャーの君、投げてみてくれ。」
警察が指示を出す。
キャプテンはマウンドに立ち準備を始めた。
内心投げる所の話ではない。
又四郎は口を挟んだ。
「良いか鬼共。わしは思った方向に打ち返せる。まずは小うるさい貴様の頭上をかすめてやろう。」
又四郎は詰問してくる警官に向けて、バットを合わせた。
「ふん。高校生にそんな曲芸じみた真似が出来るものか。」
警官は鼻で笑う。
「よ〜し、投げてみてくれ。」
警官は手を上げてピッチャーに合図を送る。
キャプテンはボールを又四郎に向けて放つ。
結構な本気で投げた。
カキン!
金属バットの音が響く。
と、同時に、警官の帽子が吹き飛んだ。
真っ直ぐにボールはフェンスの柱にぶつかる。
警官は呆然と立ち尽くした。
そして、どっと冷や汗が流れた。
なんだったんだ今の球は・・・。
他の警官達も呆然と立ち尽くした。
その後も予告通り、打った球を命中させていく。
「解った。職員室まで届いたことは理解した。」
警察は納得し、渋々引き上げた。
教頭はひたすら謝るだけだった。
「いやぁ〜君、凄いよ!」
野球部のキャプテンは警察が帰って、ようやく落ち着いたのか、又四郎に話しかける。
「是非、野球部に入ってくれないだろうか?」
「うむ・・・。止めておこう。このまま続けたら恐らく、死人が出てしまいそうだ。」
「う・・・。そうかも知れないが、勿体ないよ。この実力があれば、プロにも成れるよ!」
「そこまで言うなら、まあ、考えておこう。」
又四郎は、野球部の練習場所から歩き出した。
ひとまずさっきの職員室へ行こうと思った。