この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
近藤以下四名、師範芹沢を含めた合計五名は、夜の8時に神社へ来た。
他校の制服を着込み、植え込みに木刀と鉄パイプを隠す。
顔にピエロの仮面を被り、声が漏れないように手拭いで口をふさぎ、それぞれの計画した持ち場に隠れる。
縄を土に埋め隠し、エアガンも装備し、準備は万端に整った。
幸い、散歩に来る人もいない。
又四郎の到着を近藤達は待つだけであった。
又四郎は、植え込みから人の気配を感じた。
「誰だ?」
猫が一匹、ニャアと言って、走り去っていった。
「ん?」
又四郎の膝にレーザーポインターが当てられている。
「虫か?」
レーザーポインターを指で払う。
が、払えない。
そこに突如、ズダダダダとBB弾が撃ち込まれた。
「ぬっくくっ!!」
激しく足を撃たれ、動きが鈍る。
又四郎は思わず地面を這う。
容赦無く背中や頭にBB弾が撃ち込まれた。
至近距離から撃ち込まれる弾の威力は凄まじい。
しかも虚を付かれた又四郎は、見えない相手から逃げるだけで精一杯だった。
エアガンを撃ったのは斎藤だった。
斎藤は容赦無く撃ち込んでいた。
そこへ、永倉と土方が鉄パイプを持ち又四郎を滅多打ちにする。
流石の又四郎も、背後を取られては頭を抑え丸まって防御するしか方法は無い。
「うぐぐ・・・。卑劣な・・・。」
又四郎はただ耐えた。
体はガタガタになって、立ち上がる事も出来ない。
永倉と土方が又四郎の両腕を持ち、立ち上がった。
又四郎の腕を伸ばし、腕目掛けて芹沢と近藤が木刀を腕目掛けて降り下ろす。
「う、うぎゃあああっ!」
又四郎の腕が折れる音が響いた。
フラフラになりながら、階段へよたついていく又四郎の足に、縄を掛けて躓かせた。
階段を転げ落ちる又四郎。
下まで落ちると、そのまま動かなくなった。
襲撃した五人は、神社の後片付けを始めた。
武器を回収し、袋につめる。
弾もなるべく拾い集め、縄も回収した。
神社の裏手から逃げて行った。
又四郎は動かない。
顔を地面に埋めたまま、動かない。
道場で疲れ切って、油断していたとは言え、ここまで又四郎がやられたと言う事は、余程の周到な計画が練られていた事を物語っていた。