この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
「今夜が峠になるでしょう。」
沖田総合病院の医師に、小野忠明は告げられた。
内蔵に酷いダメージを負って、意識不明の重態である又四郎。
身体中に鉄パイプと思われる打撃跡と、両腕の複雑骨折。
近距離から威力の強いエアガンで何ヵ所も撃たれた内出血。
頭から神社の階段を落下した時に頭蓋骨を骨折し、顔面の骨にもヒビが入ると言う重傷。
又四郎は、生死の縁をさまよっていた。
「あんなに丈夫な奴だったのに、どうしてだ!何故、こんなことに成った!!」
忠明は廊下を拳で叩く。
遙は泣くことしかできず、カナが励ましている。
予断を許さない状況で、3人はワラにもすがる思いだった・・・。
たまたま通りかかった、沖田総合病院の院長の息子である沖田総一(おきたそういち)の、お陰で、すぐさま救急外来へ運び込まれた又四郎は、迅速に手術室へ運ばれ、手術が行われた。
一命はとりとめたものの、全く予断を許さない状況に変わりはない。
暴行を行ったのは剣道部員と顧問である。
腕に覚えのある人間による強烈な打撃は、流石の又四郎にも堪えた。
エアガンの不意討ちも、実に見事な作戦だった。
きっと又四郎は、何がなんだか解らないまま、半殺しにされてしまったのだろう。
3人は、三様に思いを巡らせ悲観していた。
「どうだい?彼の様子は?」
沖田が3人に話し掛けてきた。
「今夜が峠なんですって・・・。」
カナは声を振り絞って答えた。
「そうか・・・。手は尽くしたと言っていたけど、何とか意識だけでも戻ってくれば良いのだが。」
沖田は考え込むように呟いた。
やがて夜は更ける。
又四郎の心音を示す音だけが、廊下まで聞こえてくる・・・。
ピッ・・・。
ピッ・・・。
ピッ・・・。