この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
織田高校剣道部は、地区予選を突破し、見事インターハイへの出場を勝ち取った。
地区大会男子団体戦に於いて、新戦力である一年生の活躍は目覚ましいものがあった。
この一年生は、とかく不真面目で、部活はおろか、学校にも単位取得以外には出てこない有り様だった。
しかし、成績は常にトップ10内を維持し、親も地元に力を持つ有力者であった為、学校側は黙認していた。
地区予選選抜の剣道部内の試合に於いて、三年生レギュラー陣に一本も取らせず、完封勝利を収め、レギュラー入りしたのだった。
遙は驚いた。
選抜戦で、初めて見た幽霊部員のこの男子に。
クラスは違うが、試験の順位表に必ず名前がある幻の同級生。
そして、又四郎が入院している病院の息子。
沖田総一だった。
「いや、師範。今年の一年は怪物ですね。」
近藤は、芹沢に言う。
「うむ。問題児だが、実力は確かなものだ。上手く使い、今年こそインターハイで優勝するぞ。」
「はい。師範。あの男よりはマシですから。」
「ふふふ。それもそうだな。」
近藤は小声で芹沢に耳打ちする。
「高柳はまだ意識が戻らないそうです・・・。」
「・・・。好都合だ。警察も、我々の仕業だと全く気付いていない。」
二人はこそこそと、話していた。
「沖田君。剣道部だったんだね?」
遙は沖田に話し掛けた。
「うん。練習とか好きじゃないから滅多に来ないけどね。」
沖田は淡々と話す。
「でも、凄いよ。一年生でレギュラー入りするなんて、織田高校剣道部初めての快挙らしいよ。」
「ふ〜ん・・・。別に興味は無いけど。」
「今日も病院に寄って行くの?」
沖田は遙に聞く。
「あ、うん。目覚めたら誰か傍に居てあげないと可哀想だからね・・・。」
「あれから一月経つからな・・・。」
沖田は毎日又四郎の見舞いに来る遙や、カナや、忠明と親しくなっていた。
「でも、沖田君。どうして剣道部に出てくる気になったの?」
遙は不思議そうに聞く。
「・・・。う〜ん・・・。何でだろう・・・。」
沖田は首をひねる。
その仕草を見て、遙は思わず吹き出した。
「ふふふ。変なの・・・。」
−あ、笑った・・・。−
沖田は心の中で思った。
「よ〜し、全員集合!!」
芹沢は部員達を集め、インターハイのスケジュールを通知しはじめた。