この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
「小野。つかぬ事を聞くけど、3年と何かあった?」
沖田は遙に聞く。
「ん?別に無いけど。」
「聞き方が不味かったな。あの又四郎と3年の間で、何かあった?」
沖田は改めて聞き直す。
「え?そうか、沖田君は知らないか。
沖田君が部活に出てくる前に2つ事件があったんだよ。3年生には口止めされてたけど、今は居ないから言うけど・・・。」
遙は4月の女子部員による集団暴行事件と、又四郎が3年レギュラー陣と顧問を倒した事件について、沖田に説明した。
「へぇ〜。そんな事があったんだ・・・。だから、やたらと又四郎の事を聞いて来たのか・・・。」
「3年生も心配してくれていたんだね。又四郎の事を。」
「あ、うん。心配とは少し違うかな。怪我の具合とか、治りそうかとか、学校には出てこられないよなとか・・・。」
「え?それってどういう事?」
「3年生って見舞いに来たこと無いよな。学校側も、公にしていなし、やけに怪我の状態を知っている気がするんだよな・・・。」
「お、沖田君・・・。それってまさか!?」
「しっ!大きな声を出すな小野。説明を聞いて何となく・・・。ね。」
遙は小声で言う。
「3年生が、又四郎を襲ったかも知れないって事?」
「あるいは、だけどな・・・。仮に襲っても、あそこまでやるか?間違ったら殺してたかも知れないのに。」
「う〜ん・・・。解らない・・・。けど、自分達の腹いせに襲ったとしたなら、私絶対許せないかも・・・。」
遙は拳を握り締めた。
「あと一つ。澤部って知ってる?」
「うん。又四郎と同じクラスの。」
「そう。そいつの兄貴ってヤクザなんだけど、又四郎と何かあったの?」
「それは、聞いた事ないかな・・・。兄さんなら知ってるかも知れないけど。」
「澤部のアニキが入院してるのも、うちの病院で、何故か剣道部の3年と一緒にお見舞いに来たことがあるんだ。」
「え?」
「そのお見舞いに来た所を偶然見てしまって、そしたら何故か芹沢先生も一緒に来ていたんだ。」
「顧問として付き添いにとかじゃなくて?」
「芹沢先生も親しげに話していたから、よく覚えてる。」
「た、たまたまだよね・・・。ヤクザの人と知り合いとか・・・。」
遙はぐっと息を飲む。
「少し、キナ臭いよね。」
沖田はそれ以上、何も言わなかった。
遥も沖田に何も聞けなかった。
二人は部活に戻って、稽古を続けた。