この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
平賀の妹が保護された。
澤部の女の部屋に監禁されていた妹は、特に乱暴された様子もなく眠っていた。
澤部の兄と澤部の女は逮捕された。
澤部の兄に関しては、しばらく療養が必要だが。
「問題は、又四郎を襲った奴等の証拠と裏付けが必要な事だな・・・。」
小野忠明は言った。
「澤部が口を割っても、物証が乏しい・・・。まして、未成年の犯行だ・・・。」
又四郎の病室で、小野忠明は沖田と、監察医の大石と話をしていた。
「いっそ、澤部兄のせいにして逃れる積りかもな。」
大石が忠明に言う。
「可能性はあるよ、二郎さん。澤部の兄貴はろくでもない奴だからな。
脅されてやったと言われても、信用するさ。我々は。」
沖田は眠そうに聞いていた。
「あの〜、現行犯なら問題ないですよね・・・。」
沖田は口を開く。
「まあ、そうだが・・・。絶対に尻尾は出さないだろう。」
「いやぁ〜、一つ面白い事をやってみたいんですけど・・・。」
沖田は二人に面白いと考える計画を話す。
「う〜ん・・・。あまり警察的にはよろしくないが、炙り出せるかも知れないな・・・。」
忠明は言った。
「そうだな、少し芝居がかっていた方が、案外騙せるかもしれない。」
大石も同意する。
沖田は言う。
「確認しておきたいんですが、澤部兄の逮捕及び、女の逮捕と、平賀君の妹の救出はまだ、誰にも知らされて居ませんよね。」
「ああ、関係者以外誰も知らない。」
忠明が答えた。
「澤部の弟も、組関係者も?」
「ああ、未だ知らない。」
「なら、やってみましょう。ああ、面白くなってきたな。」
沖田はまるで、チェスを楽しむように、頭の中で組み上げた計画を、実行しようとしていた。
「あ、高柳君にも協力してもらわないと・・・。」
眠っている又四郎を起こし、作戦計画を話す。
さすがの又四郎も、沖田の作戦の奇抜さに、寒気すら覚えた。
「沖田殿。解りました。お主の作戦とやらに賭けてみよう。」
四人は沖田の計画に則り動き始めた。