この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
朝、近藤の家のインターホンが鳴る。
ピンポン。
夏休みも終わりに差し掛かり、受験勉強にもいささか疲れていた近藤が姿を現す。
「どうしたんだい、沖田君?部活の話かね?」
沖田は面倒くさそうに話をする近藤に、手紙を渡す。
「先輩。昨夜、病院で事件がありまして、うちに入院していた高柳君が、同級生の平賀君に呼吸器を止められてしまって亡くなってしまったんですよ。」
近藤は一瞬ピクリと動く。
しかし、冷静に、
「そ、そうか・・・。高柳君だったっけ?彼は部活の見学に度々訪れていてね・・・。
知らない顔じゃないだけに、ざ、残念だよ・・・。」
方便を述べる。
「ええ。良い青年でした。」
沖田は続けて、
「平賀君は未だに捕まって居ないらしく、警察も手を焼いているそうですね・・・。」
「ほ、ほう。そうなのか。早く自首してくれれば良いな。」
近藤は目をそらして沖田に言った。
「その手紙は、朝澤部さんから頂いてきたものなんですが、近藤先輩は澤部さんとお知り合いなんですか?」
「えっ!?ま、まあ、色々と・・・。」
「近藤先輩に至急渡してくれと頼まれまして。こうして伺った訳なんですよ・・・。」
「お、沖田君。ありがとう。手紙は読ませてもらおう。じゃ、また。部活頑張りたまへ。」
近藤はそそくさと家に入ろうとする・・・。
「あっ!近藤先輩!」
沖田が急に呼び止めた。
「解りました・・・。」
ギクッと、振り返る近藤。
「澤部さん、織田高校の剣道部OBなんですか?」
近藤は胸を撫で下ろした。
澤部の兄は、高校すら行ってないとは言わず、
「あ、ああ、そうそう。だから知り合いなんだ。きっと、インターハイ優勝おめでとうとか何かだろう。
じ、じゃあ・・・。」
近藤は家の中に入っていった。
「近藤さん。解りやすすぎ。」
沖田は呟いた。
澤部の兄は集中治療室に移動させ、外部との連絡は取れない。
弟や親は、滅多に顔を出さない。
澤部兄の女は、ひとまず留置しているが、やはり外部との連絡は取れない。
澤部の所属する組織の関係者も、警察がマークしている。
後は、近藤達がどう動くか・・・。