この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。



深夜2時。



倉庫跡地に、5人は現れた。



澤部兄が平賀を連れて、この倉庫群の何処かに居るはずだった。



5人は倉庫の鍵を確認しながら歩き出す。



「し、師範・・・。澤部に平賀を殺す手伝いをさせられたら、どうします・・・。」



「落ち着け近藤。俺が何としても思い止まらせる・・・。」


芹沢は近藤に言う。



「おい・・・。どうして高柳を殺すなんて話に成ってしまったんだ・・・。」


土方は近藤に聞く。



「何度も説明しただろう!俺だってそこまでするとは思わなかった。
しかし、どのみち高柳を襲ってあそこまで追い込んだのは我々だ。
ここまで来たら、腹を決めるしかない。」



斎藤と永倉は、もはや何も言わなかった。

と、言うより、言えなかった。



暴行して重傷を負わせた事実をひた隠しにし、ついには容疑を平賀に擦り付けて自殺に見せ掛けて殺す。


およそ、高校生が考える、範疇を越えたダークサイドに加担しようとする自分達。

現実の出来事ではないような感覚を、5人は感じていた。




倉庫跡地は、建物だけが残り、中は空っぽだった。

一ヶ所、倉庫扉の南京錠が外された場所が有った。
重い扉を開け、中に入る。




芹沢は自分も含めて全員に、伸縮式の警棒を持たせていた。


それは、最悪の場合、澤部兄と戦う為だった。

澤部兄を倒した所で、全ての罪を背負わせる積もりでいた。

無論、平賀救出の説得に失敗した場合を想定して。





真っ暗な倉庫内に、近藤が持ってきた懐中電灯の灯りが射し込む。



上方を照らした時だった。



「う、うわああああっ!!」



近藤が悲鳴を上げた。



全員が、近藤の照らした明かりの先に目をやる。

そして凍り付いた。



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