この時代に剣客が現れて剣道部に入ってしまったよ。
「又四郎!ほら、いい加減機嫌治して?」
遙が又四郎の体を揺する。
「ふん。遙殿は散々家族家族と言いながら、わしに隠し事をしおって・・・。」
遙が病室にやって来るなり、慌てそっぽを向き、機嫌が悪いのを装っている又四郎。
まるで、子供のようだ。
「だから〜黙って皆で海に行ったのは悪かったって言っているでしょ!」
「遙殿・・・。わしが言いたいのは、そんな小さな事ではないのだ。
何故、あの破廉恥沖田に写真?だったか?に、納まってしまったのかと言う事なのだ!」
遙は、キョトンとしている。
「だから、あのような派手な乳隠しと、ヒラヒラフンドシと言う格好で、海に行ったのかと言う事に、怒っておるわけで・・・。」
遙は吹き出す。
「ああ!水着の事?確か、沖田君に写真撮って貰ったけど、あれ〜?見たかったのかな?高柳又四郎君。」
「なっ!そうではない!うら若き乙女が、あんな格好で男の前に立つ事がな・・・。」
遙は無視して続ける。
「又四郎は、見たくないの?私の水着姿・・・。」
寂しそうに言う。
「いやいやいや!見たい!非常に見たい!あれ?こうじゃない・・・。」
尚も遙は笑う。
「ふふふ。ありがとう又四郎。来年は一緒にね。」
「ああ・・・。何とした事か・・・。ついつい本音が・・・。」
又四郎は真っ赤に成って目を伏せる。
「どうだった?可愛かった?ねえ、ねえ?」
遙が又四郎のベッドに座り聞いてくる。
答えに窮する又四郎が顔を上げた時、
ドキッ・・・。
目の前に、遙の顔が在った。
軟らかそうで、薄紅色の小さな唇が在った。
又四郎と遙は、ハッと見つめ会う。
時間が止まったように、ゆっくりに感じた・・・。
「又四郎君。こんにちわ〜。」
カナが病室の戸を開けて、入って来た。
二人はお互い速攻で反対側を向く。
「あれ?どうしたの二人とも?」
カナは背中で向き合う二人を不思議そうに見つめる。
「又四郎君。バナナ買って来たから皆で食べよう。」
相変わらず状況が把握できないカナは、二人に遠慮がちに言った。
「た、食べよう!黄色い長いやつ食べよう!?」
又四郎が絶叫する。
「・・・。又四郎くん・・・。ちょっと表現が・・・。」
カナが赤面する。
「ん?なんだ?」
遙は立ち上がり、窓辺に足早に走り、外を眺める。
「・・・。もう・・・。」
遙は小さくそう言った。