死神の花嫁
「失礼致します。シャロン様。
クラーク様にご挨拶をと、ヴォルド様が」
「つっ!!」
わざとだと、直ぐに分かった。
反応するシャロンを見て
楽しむに違いない。
下唇を噛むシャロン。
ロゼッタが不安そうに声を掛けると
ハッとした様にシャロンは顔をあげた。
「分かりました。すぐ、参ります。」
棚の中から、用意したそれを持つと
ロゼッタがそれを持つ
シャロンの手を止めた。
「やはり、この様な事っ!」
「恥を晒さないための道具よ。
死ぬ訳じゃないわ。」
にっこり微笑むシャロンに
何も言えなくなってしまったロゼッタは
ヴォルドの部屋へ案内するしか
出来なかった。
ノックをし、声を張り上げるロゼッタ。
「シャロン様が参りました。」
「ならば、貴様は下がれ。」
中から聞こえたヴォルドの声に
手に隠すそれを強く握る。
ロゼッタに笑顔を向けてドアを開けた。
「ッ!!!」
ドクドク心臓が鳴り始める。
体がジンジン疼き出した。
目の前に座るヴォルド。
倒れそうになる体を
握り締めるそれで堪えるシャロンは
にっこり笑って見せた。
「シャロンと申します。
クラーク様以後お見知り置きを。」
優雅にお辞儀をするシャロン。
クラークも頭を下げた。
「クラークだ。宜しく頼む」
その間もシャロンの目は潤んでいた。
ガクガクと震える足。
強く握り締めるそれも限界だ。
「では、私は……」
「シャロン。」
深く低い声。
脳裏に響き渡る。
体が欲しているとシャロンも痛感した。