シークレットガール!【完】
「…はーるるん」
「何ー?」
「家出したらしいじゃん?」
「…俺知らねぇんだけど」
「あやつは志貴先輩にも黙ってたのか…。志貴先輩聞いて聞いて!2週間前から家出してたんだって!しかも、毎日宿泊はどこだったと思う!?お・ん……………ふがっ」
いきなり口を塞いできたはるるん。
「マジやめて。ここでそんなこと言わないで」
マジだ。こいつ、真顔で言ってやがる。
「ひゅかふぁいふぁー。だゃまっふぉいてあひゃるー(しょうがないなぁ。黙っといてあげるー)」
「ん、よろし」
彼は一人で頷き、手を放してくれた。
「…晴」
「何ー?志貴」
何じゃないでしょ。
志貴先輩は間違いなく説明を請求してらっしゃるだろ。
「…ごめんってー。家出しちゃってさー、なんか言いづらくてー」
嘘。
こんなの嘘だ。
はるるの“ヤサシイ嘘”。
はるるんの“カナシイ嘘”。
「本当に言いづらかっただけなの?」
違うでしょ?
言いづらかっただけなら、こんなにすれ違っていなかったはずだよ。
ただ、はるるんが言わなかった。
だから、志貴先輩は何をすればいいのか分からなかった。
「…本音、言ったら?5年分の」
はるるんが見開いたようにあたしを見る。
あたしは気付いたことをアピールするようにウィンクをすると、睨まれた。
何故睨む。
マジではるるん謎。
何で言いづらかったで誤魔化したのか謎。
「志貴先輩も言うことあるんじゃないですか?はるるんが嘘ついてるの知ってたんじゃないですか?」
ピクリ、小さく志貴先輩の肩が揺れる。
言いづらかった。ここまで分かりやすい嘘はないと思う。
こんなんで騙せるのはモンキーとゴキブリだけだ。