シークレットガール!【完】
「あ、そーいえばさ、美沙ちゃん」
「なんだい晴ちゃん」
「夏祭り行きたいとか志貴に言ったんだって?」
あぁそのことか。
「うん」
まだ優季の許可を取れていないけど。
任せて。優季はあたしが何とかしてみせる。
彼らと居れるイベントは、夏祭りと文化祭しかない。
体育祭は欠席決定だし。
これを言えば、優季も渋々首を縦に振るだろう。
「あたし、絶対、志貴先輩と夏祭り行きたい」
「…………」
「…はるるん、だめー?」
「…っ、………」
何故に顔を赤く染める。
あたし、イエスかノーの答えを求めたはずなんだけど。
「……っ。…志貴、何て言ってたの?」
「はるるんが来るならいいって」
あの目はマジだった。
マジであたしと二人で出掛けたら何あるか分かんなくてコエーよ、って目だった。
「来てほしー?」
「……………うん」
そうでもしなきゃ志貴先輩と出掛けられない。
夏休みはそれしか遊べないだろうから。
意外とあたしゃぁ、忙しいのさ。
「…しょうがないから行ってあげる」
「どーも」
「ほんと志貴と俺の扱い差がえげつない」
「どーも」
「褒めてないし」
知ってるし。
何で関係ないやつに媚を売らねばならんのだ。
面倒面倒。
「…駅」
目の前にはいつもの駅。
始めて見た夜の駅。…と言っても8時前だけど。
明るい……。
夜の駅は眩しい、の一言だ。
あー、早く家に帰りたい。
あたしはすぐにはるるんに体を向けて、手を振る。
「ばいばい」
そう言うと、はるるんも笑顔で、
「また、明日ー」
と返してくれた。
少し嬉しかったあたしはにやけた頬を戻さずに、駅の中に溶け込んでいった。