シークレットガール!【完】
side.H
駅の中に吸い込まれるように消えていった彼女の跡を眺めていた。
あぁ、何であんなのが好きになってしまったのだろうか。
変人だしストーカーだし妄想酷いし可愛いけど志貴のこと好きだし人間的に終わってるし存在自体あり得ないしマジであり得ないし…………。
でも。
分かんないのに好きだ。
志貴が好きだかは、振り向いてくれることなんてあり得ないし。
何で好きになったんだろ。
なった瞬間、失恋決定なのに。
志貴も志貴で今はまんざらじゃない気がする。
志貴は鬱陶しそうに相手にしているけど、なんか分かるんだよね。
親友だから、かな。
「志貴、地味に美沙ちゃんのこと、認めてるんだよねぇ…」
最初は酷かった。
志貴は一人でぺらぺら喋る彼女を無視って無視って、もうこっちがちょっと可哀想って思うくらいだもん。
あの子の根性はゴキブリ並みだと思ったし。
なのに、今は認めてる。
あまり顔に出さないけど、クールに決めてるけど。
「…志貴チャンには藤崎チャンがいるじゃん」
…死んでしまったけど。
──『志貴くん。私にこだわらないで、次の恋してね。幸せになってね。これが私の願いだからね』
病室の扉の向こうで志貴にそう言った藤崎ちゃん。
所謂、これは盗み聞きというやつ。
志貴のお迎え行ったら、シリアス気味で入りにくかったから仕方ない。不可抗力というやつだ。
…ほんとに次の恋するの気?
だったら、俺には勝機はないなぁ。
多分、今、一番志貴の心の中に入っている女の子は美沙ちゃんだ。
志貴は何だかんだで美沙ちゃんみたいなのがドストライクだし。
辛いのに、助けを求めず。強い瞳をしてて、我を持っていて、けど。…少しだけ、少しだけ見せる悲しそうな顔を見ると、守りたいと思うような子。
藤崎チャンもそんな子だった。
病弱なのに、無理に体育とか出て、ぶっ倒れて。
体育祭とか、体力的に辛いはずなのに志貴を暑く応援してたし。