シークレットガール!【完】
志貴が美沙ちゃんを好きになれば、…。
親友としては、とても喜ばしいことだ。
藤崎チャンが大好きだった志貴。
その彼女が春に死んでしまった。
立ち直れない、と思ってた。
彼女が死んだ直後は魂抜けたみたいにボケーとしてたりしてて。
食事もままならない、と聞いていた。
けど、その時に美沙ちゃんが現れた。
藤崎チャンと似た雰囲気を纏った、彼女が。
だからだったのかもしれない。
志貴が美沙ちゃんを認めたのは。
美沙ちゃんを藤崎チャンに重ねてたから、認めたのかもしれない。
「…考えても無駄」
俺は志貴でもないし。
考えても分からないものは分からない。
全て予想するしかない。
踵を返して、駅をあとにする。
──『あたしは捨てられたんだよ』
もう諦めたようにそう言った彼女。
あんなバカみたいにヘラヘラ笑っている彼女にそんな過去があるとは思ってなかった。
柄にもなく、
守りたい、と思ってしまった。
多分、これは恋。
初恋だね、これは。
俺もついに春が来た。…晴だけに。
…………………。
絶対、美沙ちゃんのつまらないギャグセンスが移っただけ移っただけ。
美沙ちゃんみたいにウケると思って言ってない言ってない。
「………………」
少し虚しくなってきたので、早歩きで帰ることにする。